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INTERVIEW

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『好きと仕事』インタビュー | 08

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流れに身を任せ、感じたままに描いてきた

竹内俊太郎

SHUNTARO TAKEUCH

アーティスト

月日を重ねることで味わい深くなるもの

いい「形」「色」「素材」の三位一体好きなものと言われてもそこまで明確なものが無い気がしますが、強いて言えば、細々とした、特にプラスチックで出来た小物が好きです。このご時世でプラスチックが好きと言うのも言いにくい部分はありますが、自分がいいと気に入ったら、必要性がなくても買ってしまうんです。具体的に何かというのを説明するのも難しくて、僕のアトリエにはまさにゴミのようなものが集まっています(笑)。共通点を挙げるとすれば、いい「形」、いい「色」、いい「素材」のものかな。でもそれも組み合わせが大事で、いい形のものでも、色や素材がいいと思えなければ、全く魅力を感じないです。プラスチックに限らず、銅や鉄、アルミなど常に色々な素材に注目はしていますが、それも結局のところ、色や形次第で好きかどうかの良し悪しは変わります。同じものでもいいものとそうでないものがあると思っていて、例えばペットボトルでも好き嫌いはあります。ペットボトルの形や使っている素材が好きでも、キャップの色がいいと思えなかったら、そのペットボトルは「好きではない」となります。

ごちゃごちゃとしたカオスな世界

小さい頃を振り返ってみると、BB弾やステッカーなど、小物を集めては部屋に置いたり飾ったりしていました。ごちゃごちゃに置かれている感じをたまに眺めるのも好きなんです。母親に片付けなさいって怒られたりしましたけどね。絵を描いたり、粘土で遊んでいるような子供時代で、途中から少しだけアメコミのキャラクターフィギュアの強い色調に惹かれて集めたこともありましたけど、今はそこまでではないです(笑)。でもそこからプラスチックの小物を集めるようになったかもしれません。最近のお気に入りは、派手な色味のプラスチックの藻です。どこで買ったかは忘れてしまいましたけど、水槽の中にその藻を入れて、ライトアップさせています。波佐見焼の陶磁器メーカーである[マルヒロ]の社長、馬場さんとはよくお仕事を一緒にしているんですが、[マルヒロ]とコラボレーションして作った、[NIKE]の名作スニーカー[AIR FORCE 1]もその水槽の中に入っています。プラスチックとは違って、いい素材で作られている代物なので、雰囲気が締まるので好きな組み合わせです。

流れに身を任せ、感じたままに描いてきた

今まで集めてきた小物が、自分の作品に影響しているかと聞かれると、正直に言うとわからないです。意識はしていないですが、蓄積はされていると思います。ただ僕は、あれこれ考えて行動するというより感覚寄りの人間なので、物事を深く考えないようにしている。ブルースリーも“Don't Think But Feel”と良いことを言っていますよね(笑)。絵を描いていくうちに、段々と自分の描くスタイルは確立されてきましたけど、僕の色が何かというのは言葉では説明できない。だいたい使う色は決まってきていますが、組み合わせでどんどん変わっていくもんです。その時の自分の気持ちと合わせて色合いを変えてみたり、クライアントさんからの依頼に合わせて少しいつもと違う色を使うこともあります。

クライアントさんも僕のテイストを気に入って依頼をしてくれていると思うので、イラストに関してとやかく言われることはほとんどないですね。逆に出来上がったイラストを、その後デザインに落とし込まれて、自分が想像していなかった仕上がりを見た時はショックを受けることもあります。広告などで売上を重視した結果、商品が強調されたデザインとなって、イラストとのバランスが崩れることがあります。イラストレーターは最初から最後までプロジェクトに関わることがなかなかないですから、仕方ないと言えば仕方ないですが、初期の段階から関わる機会が増えたらもっとできることはあるのかもしれないですね。一方で数少ない海外雑誌のクライアントさんは、その落とし込みのクオリテイが長けていて、僕としてはしっくりとくることが多いんです。

絵を描くことはごく自然なこと

昔から絵を描くことが好きでした。多摩美に入り、アニメーションの授業をきっかけにクレイアニメにハマって、友達とユニットを組んで作品を撮っていましたが、平行して絵は描き続けていましたね。作成したZINEをアメリカにいる友人に頼んで置いてもらったのをきっかけに、雑誌の『HUgE』のイラストをやらせてもらうことになったり、今でも友達づてでお仕事をもらうことが多いです。お店に飾るアートやブランドのポスター、カタログ、広告など色々と描いています。絵を描いている時って、仕事という感覚もあれば、遊びという感覚もあります。正直なところ、絵を描くことは何かとそこまで深く考えていないですが、僕にとって絵を描くことは自然なことなんです。よくどうして斜視の人の顔を描くのかと聞かれますけど、あれは昔からやっているスタイルで、寄り目だとポップになってしまうので、斜視にすると描きたかった人の顔に近づいたんです。

今回[SkiiMa]のウェブサイトの絵を描かせてもらいましたが、好きと好きを掛け合わせるということで、レコードの上で本を読んでいたり、パソコンの上でバーベキューをしている人の絵など、面白い掛け合わせにしました。普通だったらあり得ない状態を強調した変わったイラストになっていると思います。アイディアは気兼ねなく話せる友人たちと話して浮かぶ時もあれば、家に帰って一人で考えることもあります。アイディアが思いつかない時は、ウーンと唸って、散歩をしたり、本を読んだり、海に行ったり、そんな洒落たことはせず、無理なものは無理と諦めて横になって、寝たりぼうっとしたりしています。その繰り返しで最後の最後にアイディアが浮かんで、作品をギリギリ提出することもよくあります。アイディアが出るまでって苦しいですが、浮かんだアイディアが形になった瞬間って気持ちいいですね。

こだわりすぎず、焦りすぎず

きっとこれからも、自分がいいと思ったものをこれといった目的もなく、集めていくと思います。結局僕はチープなものに心が動いてしまうんです。たまにいい値段のするアートを買ったりしますが、高いものはこれと決めた時以外はそんなに買わない。いくらからが高いのかは、その物次第だと思います。高いものにまで目を向けたら、いい形、いい色、いい素材のものはいくらでもありますけど、「これ安いな」と思って買うのが楽しいんです。プラスチックの製品って、だいたいMADE IN JAPANではなくて、アジア圏で生産されたものが多いですよね。例えばインドやタイに行った時は、欲しいと思うカラフルなプラスチックの小物がたくさんあって、「あれも欲しい」「これも欲しい」と大変だった。日本と違って、プラスチックの色味が少し違うんですよね。日本には無いものという視点で見ると、プラスチックから醸し出される異国情緒を楽しんでいるというのもあります。それもやっぱり自分の絵に影響を与えているのかもしれないし、そうでないかもしれない。僕は最初にお話した通り、本当にこだわりがないんです。その場その場で自分がいいと思うものに出会ったら、手に入れる、それの繰り返し。好きなことに対して、こだわりすぎなくてもいいじゃないかと思う時もあります。「これが好き」ってそこまで人に話すことでもないですし、別に好きな物がなかったらなかったで、その時は仕方ないって思えばいいと思うんですよね。僕は昔から何においても焦っていなかったから、もう少し焦っておくべきだったかもしれないですね(笑)。

Profile
竹内俊太郎
アーティスト
国内外の展示会に出展。雑誌、広告のイラスト、ショーウィンドウ、の他多岐にわたり活動中。SkiiMaのウェブサイトの挿絵を担当。
Photo: Masayuki Nakaya Text: Yuko Nakayama