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『好きと仕事』インタビュー | 05

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やりたいことは3年くらいずーっと考え続けると、現実になる

園田崇匡

TAKAMASA SONODA

株式会社FER 代表取締役

やりたいことは3年くらいずーっと考え続けると、現実になる

好きなことは企画系なんです。お店を作っている時が一番楽しい。店の他にも、洋服の企画なども好きで、アーティストや友達と考えた企画がオリジナルグッズとして形になった時とかは楽しいですね。高校の時からDJをしていて、ただの当時のブームの被害者ですが(笑)。その時から遊んできた人たちに今も助けられているなと感じています。例えば、DJのオカダくんが、僕が2018年に作ったアジア料理居酒屋[台風飯店]のロゴをお願いしたアーティストのNONCHELEEEさんを繋いでくれたり[台風飯店]をラッパーのBASIさんが代表曲『愛のままに feat.唾奇』のPVのロケに使ってくれたり。アーティストや店をやっている友達が店の冷蔵庫にステッカーを貼ってくれていて、それがお客さん同士で話のネタになる。支えられてるんです、みんなに。だから、その人たちに対してダサいことはしたくない。彼らのテンションをアゲて喜ばせたいというのが企画の原動力になってますね。

2009年頃、DJイベントでラーメンを出店したのをきっかけに、その3年後にサラリーマンを辞めてラーメン店を神戸でスタートしました。初めは1日の売上が2000円。ただ、この頃から決めているのは、考えるより先に実行すること。飲食店経験がなかったにもかかわらず、やりたいと思ったことはあきらめませんでした。朝から晩まで働き、味の改良を重ねた結果、十分な売上を達成しましたが、ただ食べるために働いている気がして、満足することができませんでした。

それで、次の店をオープンすることに。だいたい、いつも新しく出店する場所は2、3年前くらいから目星を付けておきます。大阪の[大衆食堂スタンドそのだ]は、以前肉屋だったところ。近くに住んでいたので、そこが空いたら大衆食堂をやりたいなとずっと思っていて。大阪の[台風飯店]は、携帯電話ショップだった物件。体力は20代の方があるけれど、30~40代になって良くなるのは、目から入ってくる情報量が上がること。40歳の自分の仕事は、常に見たり聞いたりして情報収集を重ね、考えを止めずにゴールに向かって毎日前進することだと思っています。

2016年に2店舗目としてオープンした[大衆食堂スタンドそのだ]を始める時「大衆」という言葉の意味を改めて考えました。昔からある大衆酒場は、今、70~80代の人が30~40代の時に作ったもの。今の30~40代の人が大衆なら、パクチーやら山椒やらをたくさん使う料理が大衆酒場に似合うと考えました。そのイメージでメニューを作ったら、行列ができる店になって嬉しかったです。90年代のアニメグラスはDJのイベントで島根にいった時にリサイクルショップで見つけて、お酒を入れたらきれいかな?と購入。そのグラスバイスサワー(赤紫蘇を原料とした紫色の飲料水。焼酎などで割って飲む)を入れてだしたら、“映える”と話題になり、Instagramのブームの波に乗って大人気、これも集客につながりました。この時、ラーメン店の時にはなかった満足感が得られて、ガラッと周りから自分への評価も変わり、人に認められたような気がしました。

原体験だけでなく理想をしっかり持つことが、夢への近道

飲食店の理想のイメージは地元、広島の福山市にあります。高校生の時に通った[自由軒]という大衆食堂がモチーフなんです。コの字カウンターのある酒場で、そこにおっちゃんしかいないなか、背伸びして、定食やカツ丼を食べに行っていました。他のお客さんはみんな昼から酒を飲んでいて、酒が飲めるようになったら来たいな思って。憧れられる街の先輩が生まれる場所を作れたらいいなと思っています。

最近、力を入れているオリジナルグッズを作り始めた理由は、飲食業界の求人がだめになる時代が来ると心配しているからなんです。求人に強いのはカフェなんですよね。そういう状況を考えて居酒屋の形態をカフェ風に作ったのが[台風飯店]なんですけど、そこでアーティストとコラボしたTシャツを作ったり、服屋をやったりすることで、普通の飲食店ではないイメージを与えられたらいいなと。広島のコーヒーショップ[包愛咖啡]で求人を出したところ、なんと応募は120人。その一週間後にラーメン屋で求人を出したら、応募は0人でした。ラーメン屋はやっていたら儲かるけど、そういう理由で広がらない。自分としてはラーメン屋だろうがコーヒー屋だろうがいっしょ。でも、そこで働く人に対する世間のイメージとはそういうものなんだな、イメージをもうちょっと良くしたいという気持ちがあって、オリジナルグッズを企画するようになったんです。

僕は、親に教えられていた普通の人生を歩むことが正解だと考えていました。会社に入って、30歳くらいで家買って、結婚して、子どもできてみたいなやつが普通なんかな?と思っていました。飲食店や洋服屋さんは、プロフェッショナルな人がやることで、自分は向いてないんだろうなと、勝手にそういう風にあきらめていました。だから、今、幸せです。ずっと認められたいと願っていた自分がいて、今は、少しは認められているのかな?と感じています。根拠のない話なんですが、日本人はみんな恥ずかしがり屋らしくて、だから「のれん」が生まれたという説があります。のれんは日本にしかない文化。[大衆食堂スタンドそのだ]にかかるのれんは、実は、布の同士の隙間の幅とか、文字の書体や配置にけっこう気をつかっています。何回ものれんのデザインを改良し、その度にお客さんが増えたんです。すごく細かいことでも工夫すると、お客さんに喜んでもらえると実感しました。飲食店も、日本人にしかできないすばらしい業態がまだまだあるんじゃないかなと考えています。外国で見かける「いいな」と思うデザインやサービスを、そのまま日本でやっても流行らないだろうと思います。では、どういうふうに落とし込んだら日本でよく見えるのだろうか?今は、そんな企画を考えています。ランチに1000円以上出さないとか、ほかほかの作りたての料理でないと嫌だとか、目の前でサーブされて食べるのはあまり好きではないみたいな、日本人の心理をずっと探っている最中。今に生きる日本人だからこそできることを、もっと探っていきたい。「昔はよかった」と言うような人間になりたくないです。ま、そもそも昔のことは忘れちゃうんですけど(笑)。

Profile
園田崇匡
株式会社FER 代表取締役
2012年に神戸で中華そばそのだを開業後、2016年に大衆食堂スタンドそのだを開店。その後(株)FERとして事業化し現在大阪、広島県福山市、博多を中心に店舗展開している。
Photo: Tamami Tsukui Text: Mayuka Haginaga